プロダクトライフサイクルとイノベーター理論
【目次】
とあるミーティングで、イノベーター理論を用いたんですが、相手も同理論を知っていて、話にのってきてくれました。共通言語で話せるっていうのはすごく効率的で良いなと感じました。
なんか小学生の読書感想文みたいになってきました。ということで、今回はイノベーター理論をはじめとするウネウネした曲線グラフたちを取り上げます。
プロダクトライフサイクル
命あるものには必ず終わりがきます。
そんな諸行無常の響きを、感慨もなくグラフに起こしたのもの、それがプロダクトライフサイクル(PLC)です。PLCは製品の売上ボリュームについて時系列で表現されるもので、導入期、成長期、安定期、衰退期の4つのステージに分かれています。
- 導入期:新製品投入直後。売上はまだ少ない。期間は短いほうが良い。マーケティング施策によって認知度を高めることがポイント。
- 成長期:製品の認知度が上がり、急速に売上が増える。ブランド育成期とも言える。期間は長いほうが良い。急成長は販売フォローや組織が追いつかなくなるなどの弊害を生む。
- 安定期:一定の売上は確保できるものの、需要はピークアウトを迎える。 期間は長いほうが良い。 ブランド力が売上を支える。ファンやリピーターによる買い支え(CRM)がポイント。製品のリニューアル等により鮮度を保つ等の施策が必要。
- 衰退期:需要減少により、売上も減少する。新製品の投入など新規事業にリソースをシフトする。スクラップのタイミングを逸しないことが重要。
安定期には新規事業を考え、衰退期に入ったら現行事業をダラダラと延命させないことが重要です。
一方、導入期には利用者数拡大のために、マーケティングやPR(Public Relations)へのリソース集中が欠かせません。これは、S&B(スクラップ&ビルド)のポイントです。
イノベーター理論
つづいてはイノベーター理論です。
商品・サービスの売上がPLC上でグループ分けされましたが、イノベーター理論では利用者がグループに分けられます。イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの5つです。簡単に言うと、新しモノ好きな人から保守的な人までを5つのレベルに分けています。
- イノベーター:新しいものを進んで採用する人。イメージは、Appleの新作発表直後に新型iPhoneを予約するような人。全体の2.5%
- アーリーアダプター:流行に敏感。アンテナ感度が高く、すぐ行動に移す人。他の層への影響力を持つ。インフルエンサーやオピニオンリーダーが多い。イメージは、SNSのフォロワーが多い人。全体の13.5%
- アーリーマジョリティ:比較的アクティブだが慎重さも併せ持つ人。アーリーアダプターの影響を受けやすい。イメージは、SNSをやっているけどロム専の人。全体の34%
- レイトマジョリティ:新しいものに若干懐疑的な人。周りの人や口コミを見てから行動する。イメージはテレビが情報源な人。全体の34%
- ラガード:最も保守的な人。トレンドをほとんど気にしない。イメージは、いまだにガラケーを使っている人。全体の16%
【イノベーター理論】
ご覧のとおり、グラフは正規分布になっています。
- イノベーター:-3σ 、-2σ 間
- アーリーアダプター :-2σ、 -1σ 間
- アーリーマジョリティ:-1σ、 中心 間
- レイトマジョリティ:中心、+1σ 間
- ラガード:+1σ、+3σ 間
パーセンテージまで覚えておくと良いと思います。どうしても覚えられない場合は、語呂で覚えましょう。
そして、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にはキャズムと呼ばれる境界が存在します。日本語は「溝」です。
イノベーターとアーリーアダプターはあくまで初期の市場であり、キャズムを越えないと一般的に商品が普及するメインストリーム市場に移行できません。利益を回収できずに撤退せざるを得ない状況になるかもしれません。
例えば、 IT市場でいうとAI、VR/ARはまだキャズムを越えていないように思います。IoT、ドローンは越えてきた感はありますね。
また、感覚的には、首都圏、関西、九州にイノベーター、アーリーアダプターが多く、東北はレイトマジョリティが多いというイメージを私は持っています。東北の企業に浸透し始めたら、キャズムを越えた感があります。
以前、解説したPR(Public Relations)の『空気をつくる(ブームを起こして定着させる)』はキャズムを越えるための戦略と言い換えることができると思います。
PLCとイノベーター理論の関係
PLCとイノベーター理論をみてきましたが、それぞれを単体で捉えるよりも、組み合わせて考えるといいかもしれません。
PLCの各期とユーザーグループは互いに影響し合います。人がいなければ普及しない、ブームになれば人が増える、わけですから。これは容易に想像できると思います。
実際は上図のようにはっきり1対1で対応しているわけではありません。もっと境界はブラーです。
技術進化のS字カーブと技術革新の非連続性
これはPLCの補足になりますが、なぜ、商品・サービスは終わりを迎えるのでしょうか?
要因のひとつとして、新技術の導入 (破壊的イノベーション) による新商品・サービスの登場が挙げられます(他にも、例えばモノが十分に行き渡り需要が低下したため、ユーザーの嗜好が変化したため、などさまざま要因が考えられます)。
既存の技術を改善・リニューアル(持続的イノベーション)しても、もはや追いつけない状態になり、市場の主役が交代します。
技術は本来S字カーブを描いて進化を遂げますが、新技術は既存技術のS字カーブ上にはなく、新たなS字カーブを描き、既存技術を追い抜いていきます(下図)。そして、旧技術は「へんじがない、ただのしかばねのようだ」 状態になります。
これを技術革新の非連続性といいます。
【技術進化のS字カーブ】
例えば、レコード → カセットテープ → CD → MD → MP3 の変遷や、固定電話 → 携帯電話(ガラケー)→ スマートフォン の変遷をイメージすると理解できると思います。 すごく身近なところでも非連続性は起こっているんですね。
この非連続性、 どこの職場でも起きています。
バックオフィスの話になりますが、法人設立から20年も経っていれば、事務作業は手書きからPCに変わっているはずです。
ただ、ここで問題なのは、今のやり方がベストなのかということでして......
PCで入力しているといっても、いまだに決裁は紙出力&判子の文化が根強く残っている職場が多いと思います。電子決裁システム(新技術)はもう実現しているのに、移行できていないわけですよ。つまり、我々は、非連続性の中でレガシーシステムに取り残されてしまっているということです。
これをイノベーションのジレンマといいます。
これは上述の例に限らず全般的な話なんですけど、旧技術に依存して新技術に移行できないと組織はどうなるかわかりますでしょうか?
労働生産性が下がり、事業推進力が落ちていきます。つまり経営力がダウンします。そして、悪い意味で伝統的な経営をしているとブランド力も向上せず、新規採用をしても良い人が集まらなくなります。良い人が来ないので、さらにレガシーシステムから脱却できなくなります。
悪循環の完成です\(^o^)/
うちの職場に、Slack、Evernote、Eightを使える職員がどれだけいるかというと、きっとほんの数%です。これで、デジタルネイティブな世代に、うちの職場で働きたいと思ってもらえるでしょうか。
事業であってもバックオフィスであっても、新技術を積極的に取り入れていかないといけません。そのために一人ひとりが日頃から最新技術に触れておく必要があります。
わかったら、とっととZOZO SUITを注文しましょう。
以上です!
S字カーブって、なんとなく波っぽく見えるんですよね。このカーブを乗りこなせるようなビジネスサーファーになりたいものです。ちなみにリアルサーフィンは1年で引退しました......
意識高いヨミモノ
『起業家のように企業で働く』
組織は歴史が古くなるほど、また職員の平均年齢が高くなるほど、変化を受け入れられなくなり、硬直していきます。
組織や企業文化の硬直化を防ぐためには、レガシーシステムからの脱却を目指す若きイノベーターが必要です。上司から言われたとおり仕事をしているだけではイノベーションは起こりません。世の中の動きを感じ取って、組織に積極的に新しい風を吹かせてください。
ぜひ、イノベーターになってください。メシア待望です。
ご一読あれ。