PRのポイント
【目次】
これまで数回にわたって、新規事業の方向性を決める、ニーズをリサーチする、アイデアを発想・着想するという話をしてきました。
今回は、実際に事業を進めるにあたって必要なPRについて解説します。
PRって何の略?
そもそも、PRって何の略かわかりますでしょうか?
これ、Public Relationsの略です。
Promotionを連想する人もいると思いますが、ここで扱うPRとは意味が違います。Promotionはマーケティングの出口部分の細かい話、Public Relationsはもっとスケールが大きい話です。
空気をつくる
では、Public Relationsとはどういったものなのでしょうか?端的にいうと、空気をつくる行為です。
ニーズの回で、潜在ニーズ(インサイト)の話をしました。消費者の潜在ニーズって我々が見つけるだけでは不十分で、消費者に気づいてもらわないといけないですよね?要は顕在化させるっていうことなんですけど、特定の個人だけではなく、不特定多数に対してニーズを顕在化させるための手法としてPRが使われます。
例えば、『いろはす』。
「ミネラルウォーターは会議中に飲んでも恥ずかしくない。スタイリッシュに見えるから。でもジュースは(液体に色が付いているので)恥ずかしい。」
そんなインサイトを受けて商品化されたのが『いろはす』です。透明な液体や潰せるボトルはスタイリッシュに見える、無色だけど無味ではなくフレーバーがある、会議中に飲んでも恥ずかしくない、そんなプロポジションが受け入れられ、爆発的な人気につながりました。
『いろはす』を製造するコカ・コーラは続いて無色透明なコーラ『コカ・コーラクリア』を発売しました。他社も参入し、無色コーヒーや無色ビールが発売されるなど、 空前の無色飲料ブームになっています。いまや、無色透明なペット飲料=スタイリッシュ、というイメージは多くの消費者のマインドに根付きました。
『いろはす』によって、今まで世の中に存在していなかったフレーバーウォーター市場という新市場がつくられたわけですが、これ、自然発生したわけではないということはわかりますよね?コカ・コーラが意図的にブームを起こして、新市場を創りにいっています。この行為こそがPRなんです。
つまりインサイトをつかみ、商品化し、ブームを起こし、世の中に定着させる、この一連の仕掛けがPRです。
エコシステムの構築
空気をつくるといってもひとつの組織だけでは実現できません。
そしてブームで終わらせず、文化として定着させるためにはさまざまな分野の協力者が必要です。いわゆる産学官金メ民連携が必要になります。
各業界がそれぞれの役割を果たしながらみんなで空気をつくっていきます。
(主な役割例)
- 産業:新規のソリューションビジネス(商品・サービス)を立ち上げる。
- 学術機関:商品・サービスの有効性を論文にして発表する。
- 金融機関:産業を財務面で支援する。
- メディア:産学連携の成果を取り上げる。
- 市民:口コミで拡散する。
- 我々:プロジェクトをマネジメントする。
(イメージ)ふるさとグローバルプロデューサー連携概念図
私が以前参加したふるさとグローバルプロデューサー支援事業で使われていた連携概念図です。地域のステークホルダーを巻き込みながら地域活性のプロジェクトを進めていきます。
各分野の協力機関を目出ししたら、関係構築済み、未構築の2種類にカテゴリ分けをします。未構築機関については、いつまでに関係を構築するのか計画を立てておきましょう。活きたエコシステムを構築できれば、PRは有効に働きます。
以上です!
空気をつくる、ってそう簡単にできることではありません。知識も経験もプロジェクトマネジメント力も要求されます。私も試行錯誤中で、いまだに大きな成果につなげられた事例は少ないです。
でも、こういうことを仕掛けるのってすごく楽しいですよ。いろんなステークホルダーとワイワイバチバチしながら、プロジェクトを進めるってなかなか経験できるものではないですから。
意識高いヨミモノ
『最新 戦略PR 入門編』
Public Relationsは、20世紀初頭からアメリカで発展してきました。日本に導入されたのは第2次世界大戦後だそうです。100年の歴史がある考え方ですので、今回の解説では当然カバーしきれません。本書を読んで、PRについて勉強してみてください。自治体職員ーは必読だと思います。
ご一読あれ。