新規事業立案のポイント

【目次】

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今回は新規事業を立案する際のポイントについて解説します。

事業立案は企画好きにはたまらない業務ですが、決して簡単ではありません。
っていうか、めちゃむずいです。

新規事業をつくれるようになったら、ある程度実力がついてきたと思っていいんじゃないかなと思います。

  

自分たちにしかできないことをやる

新規事業をつくるにあたって、注意すべき点をまずお伝えします。

下記の4点は必ずおさえるようにしてください。

 

① 顧客に喜んでもらえるか

BtoCビジネスの顧客は企業、BtoCビジネスの場合はエンドユーザーです。

企業活動や市民生活がより良くなるためのサービスを立案しましょう。これは事業開発の大前提ではありますが、企画しているといつの間にか目的がすっかり抜け落ちてしまうことも少なくありません(ありえないと思うかもしれませんが実際にあります)。

当初の目的を見失わないように注意しましょう。


② 社会課題の解決につながるか

超高齢社会、人口減、後継者不足、学校でのいじめ、震災復興などなど、日本各地で多くの社会課題を抱えています。

非常に厳しい状況にあるのは間違いありませんが、見方によっては、社会課題があるということはビジネスの機会があるとも考えることができます。ピンチはチャンスです。社会課題の解決によって、地域経済が活性化する仕組みを考えましょう。

例えば、人口減による労働力不足は大きな社会課題ですが、もし企業が事務処理AIや作業ロボットなどをソリューションビジネスとして展開できたら、経済の活性化につながるわけです。社会や産業といったマクロの視点を忘れないようにしましょう。

 

③他社が手を出しにくいところか

私の所属する機関は公的機関のため、民間ができるところに我々が手を出してしまうと民業圧迫になってしまいます。

民間だと採算が合わないけれども、社会的には必要なものを我々のビジネスにします。また、他の機関とも被らないように差別化を図っています。他機関と同じようなことをやっても顧客の奪い合いになりますし、そもそも顧客にとって有益とはいえません。

 

④メディアに取り上げられるか

Amazonでは、新商品・サービスを考える際にはまずプレスリリースをつくるそうです。これはメディア(とその先の潜在ユーザー)に響かないものはプロジェクトとしての魅力や価値がないという考えに起因しています。

メディアに取り上げられるためにはいくつかの条件があるのですが(プレスリリースのつくり方についてはまたの機会にお伝えします)、例えば新規性やトレンドといったことがポイントになります。つまり、新規性がない商品を作っても話題にならない=売れない=Amazonがやるべき事業ではない、となるわけです。

プレスリリースはつくらないまでも、新規事業をつくる際にはメディアに取り上げられるかを1つの視点として持っておきましょう。
 

事前のリソース点検を忘れずに

新規事業を企画する前にまずリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)の点検を行いましょう

リソースが豊富にあれば、事業効果を高めることができます。逆にリソースが不足していると、新規事業がうまく回らないどころか、既存事業にも支障をきたす恐れがあります。新規事業はきちんとリソースの確保が見込める場合のみ実施しましょう。

リソースの点検の際には既存事業のスクラップも検討します。スクラップした場合、どの程度リソースに余裕が出るのかを精査してください。

スクラップしてもリソース不足が見込まれる場合は、外部と連携して(エコシステムを構築して)、自社の不足分を補う方法もあります。エコシステムの構成要素は基本的に産学官金メ(メはメディア)です。それぞれのカテゴリーで連携先を見つけておきましょう。 

 

ベストなポジション獲りを

リソースを点検したら、次は新規事業の立ち位置を検討しましょう。

経営学者フィリップ・コトラーにより提唱された企業の競争上の地位を用います。競争上の地位は「リーダー」「チャレンジャー」「ニッチャー」「フォロワー」の4つに分類され、それぞれの地位に応じた戦略を取ることが望ましいとされています

リーダー
市場で最大のシェアを持つ企業
チャレンジャー
市場第2位のシェアを持ち、第1位のリーダーに取って代わる姿勢を持つ企業
ニッチャー
市場は小さいながらも、特定の領域で独自の地位を築いて成功している企業
フォロワー
業界のリーダーに追随し、競合企業からの報復を招かないように注意しながら経営成果の最大化を目指す企業

(出典:グロービス

経営資源の量と質で分類するとわかりやすいかもしれません。

  • 量が多い、質も高い=リーダー(自動車業界でいうとトヨタ
  • 量が多い、質は低い=チャレンジャー(日産、ホンダ)
  • 量が少ない、質は高い=ニッチャー(マツダ、スバル)
  • 量が少ない、質も低い=フォロワー(三菱)

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新規事業を検討する際は、保有する経営資源を参考に、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーのどの地位を狙っていくかをきちんと考え、ベストなポジションを獲りにいきましょう(中小企業の場合、基本はニッチャーです)

 

マトリックスを使って方向性を考える

地位の確認と併せて戦略の方向性を検討も必要です。

戦略の方向性は3つあります。具体的には、①既存市場にて新しいサービスを展開する、②新規市場にて既存サービスを展開する、③新規市場にて新規サービスを展開する です。

これらに既存市場にて既存サービスを展開する(現状維持)を加えて、表にするとわかりやすいです。

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新規市場に既存サービスを展開するのであれば、新規ターゲットに向けたサービスの最適化を検討する必要があります。新規サービスを既存市場に展開するのであれば、既存ターゲットに向けた新規付加価値の提案が必要です。新規市場に新規サービスを展開するのであれば、既存戦略との相乗効果を期待できない場合があります。

どれが良いというものではありません。顧客のニーズや組織の方針を踏まえて最適なものを選びましょう。

上記のような表をアンゾフの成長マトリックスといいます。事業の成長・拡大を図る際に用いられるフレームワークです。アンゾフの名前は覚えなくていいですが、マトリックスの作り方は覚えておきましょう。

 

アナロジーで事業をデザインする

事業の方向性が決まったところで、やっと新規事業アイデアの検討フェーズです( リソースの点検や戦略の方向性を検討する前にアイデアを検討することがないように注意しましょう)。

数字の見せ方やデザインでもお伝えしましたが、ものごとには順序があります。コンセプトを決めるのが先、具体的な形に起こすのは後です。

新規事業というと、何もないところから生み出すイメージをお持ちかもしれませんが、無から創り出すというのは相当難しいです。イーロンマスクやマークザッカーバーグといった超絶優秀な人材でない限り無理だと思った方がいいです。我々がゼロイチで新規事業を作れたら、世の中イノベーションだらけになります(それはもはやイノベーションとは呼べない)。ワンチャンを狙わず、地に足の着いたアプローチをしてきましょう。

では、どうするか。他から仕組みを持ってきます。アナロジーといいます。日本語は類推です。

回転寿司の回転システムは、ビール製造のベルトコンベアをヒントに作られたことをご存知でしょうか。違う業界で使われている仕組みを自分たちの業界にうまく持ち込んできたわけです。これがアナロジーです。

私が新規事業をつくるとき同様です。アナロジーを活用して新規事業をデザインしていきます。つまり、他のフィールドから仕組みを持ってきます。他のフィールドとは、他地域(海外、他県等)、他業種(IT、製造等)、他サービスモデル(BtoC等)などです。うまく自分たちの環境に適用できそうな仕組みであれば、どこから持ってきてもかまいません。

我々はリーダー、チャレンジャーになれるほど豊富な経営資源を有しているわけではありません。他から仕組みを持ってきて自事業に適応させるなど、知恵を絞ってニッチャーとして生きていく道を模索しましょう。

 

誰でも新規事業をつくれるわけではない

これは補足ですが、新規事業をつくるためには総合的な能力が必要です。

例えば、アナロジーだと他フィールドに関する知識(リファレンスといいます)が必要ですから、まず情報収集能力が高くなくてはなりません。

また、仕組みを事業団に当てはめて運用していくためには、着想力や事業デザイン力、マネジメント力が不可欠です。さらにステークホルダーとの調整力や、ある程度の事業経験も要求されます。

ですので、新規事業はプロデュース業です。誰でもつくれるわけではありません。そのことを認識しておいてください。

 

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『地方創生大全』

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